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【田沢温泉 ますや旅館】 文豪・島崎藤村も愛した旅館に泊まってきた (@長野県青木村)

この宿に泊まれたことがもう嬉しくて仕方ない。

【訪問日:2020年10月2日】

ますや旅館とは

今回は長野県青木村にある旅館に泊まってきた話です。

青木村には田沢温泉と沓掛温泉という2つの温泉があり、そのどちらもが国民保養温泉地に指定されているという、まさに温泉地として有名な場所。そのうちの一つの田沢温泉は十観山の山間にあり、開湯は飛鳥時代(奈良時代とも)と言われるほどの歴史を誇ります。

しかし、温泉街としては非常にこじんまりとまとまっており、観光色はほとんどありません。鄙びた風景が好きな自分にとっては、一夜を過ごすにこれ以上の環境はないわけです。

島崎藤村ゆかりの宿 高楼 ますや旅館 公式サイト-信州、田沢温泉

田沢温泉ますや旅館は、そんな青木村の一角にある登録有形文化財に指定されている旅館です。

このますや旅館は、かの有名な文豪である島崎藤村が明治32年(1899年)8月に逗留したことでも有名で、実際に泊まった部屋(藤村の間)が今でも残されています。もっと言うと、藤村の間には現在でも泊まることが可能なのだとか。

それでは早速、旅館の外観から見ていきましょう。

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東館横の土蔵に設けられた看板

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玄関と本館。左に西館がある

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本館の裏手側

田沢温泉へ近づいて行くにつれて、一際大きい建物が目に入ってくる。

楼閣、高楼…そんな言葉が浮かんでくるこの宿こそが、今日宿泊する「ますや旅館」です。今日ではめっきり姿を見なくなった木造三階建てという建築方式に加え、宿の見た目からして自分の好みにどストライクなのがもう堪らない。

この「ますや旅館」の創業は明治元年(1868年)で、以下の建物から構成されています。

  • 東館…最上階に「藤村の間」がある。
  • 本館…玄関及びロビーがある。
  • 西館…本館と繋がっているが通路は見当たらない。
  • 新館…本館と東館を一望できる人気の部屋。
  • 土蔵

東館と土蔵はその当時の建築のまま、西館と本館は明治の中期、新館は明治の末期建築だそうです。

上に書いたように宿泊棟は全部で4館から成っており、客室数は非常に多いものの、現在では西館や本館の最上階などは封鎖されており、さらに新型コロナの影響で「1フロアに1グループ(いわゆるフロア貸し)」制をとっていることから、1日に宿泊できる人数は相当限られている様子。現にこの日は、自分以外に3グループの方が泊まっているだけでした。

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玄関を入って真っ直ぐいったところに受付、左の階段を上がると本館の客室

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玄関部分は本館とは別棟になっており、入って早々なのにも関わらず凝った構造に驚かされます。

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ロビーには調度品や日本酒の酒瓶、ここに泊まった有名人のサインなどが所狭しと並べられていて、この空間に居るだけで気分が落ち着いていくのが分かる。一見すると雑然としているように見えるものの、よく整頓されていて良い印象を受けました。

ロビーはあらゆる棟に向かう中心に位置しており、地下に降りれば家族風呂が、すぐ横の階段を上れば本館や東館、さらに新館などへと向かうことが可能です。必然的に一番多く通貨する場所となり、ここで座って一休みする機会も多かったですね。

では、受付を済ませて部屋に案内してもらいましょう。

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案内してもらう道すがらの部屋では人の気配がまるで感じられず、ここで一夜を過ごすとなるとなかなかに怖いのではと思うと同時に、逆に言うとほぼ貸し切りみたいなものなのでテンションが有頂天になったりもしました。

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今回の部屋は本館2階の第拾弐番

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最高すぎる…。

部屋にはそれぞれ番号が割り振られており、今回は一人旅プランを選んだためなのか本館の部屋になりました。すべての部屋は基本的に二間続きになっており、さらに前述したようにフロア貸し状態になっているので気兼ねなくのんびりすることが可能です。

「二間続き」って旅館においては非常に重要だと個人的には思っていて、一部屋よりも安心感がまるで違うんですよね。一人で訪問すると「えっこんな素敵な部屋を一人で使っていいんですか!?」ってかなり嬉しい気持ちになるので、部屋の広さはやっぱり大事です。

そして、今回この部屋が最高すぎた最大の理由がこちら。

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奥側が東館

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奥に見えるのが新館

もう堪りません(感動)

旅館によくある「何となく居心地がよく、つい椅子に座って長居してしまうあの空間」。正式名称は「広縁(ひろえん)」といって、その名の通り幅が広い縁側なんですけど、もうこれがとにかく"良すぎ"る。

窓が大きく設けてあって採光も十分すぎるし、椅子に座って新館方面を眺めているだけで心が落ち着く。

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新館方面を眺める

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窓については欄干部分と完全に別になっているので後付のようです。あと隙間もかなりあって、冬場は結構寒そう

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窓はすさまじく建付けが悪いものの、それが年季を感じさせてなんか深い気持ちになる

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広縁の突き当りにもソファがあって、ここに座って本読んでました

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ちなみに、建物全体が歪んでいるのかどうかは不明ですが、部屋の中で写真を撮るとかなり面白いものが撮れたりします。

これは別に撮影の際の水平が取れてないわけではなく、あくまでカメラのレベルは水平で撮影した写真です。もうどこが曲がっているのかよくわからない。

ますや旅館内を散策する

そんな部屋の構造に歓喜しつつ、せっかく旅館に来たことだし館内をあれこれ散策してみることにしました。温泉も入りたいしね。

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まずはロビーへ降りて新館方面に向かってみます。

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肝心の「藤村の間」は、ロビーを抜けてすぐ右手にある階段を上った先にあるようです。今回は宿泊者がいるため入ることができませんが、いない日に限っては見学もできるっぽい。

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そして、新館に続く階段もまた雰囲気がよいもの。

新館の建設時に本館からの連絡通路として造られたと想像しますが、一段が約10cm程度と非常に低く、あえて階段形状にした意匠にも感嘆せざるを得ません。

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新館へ続く階段の先には客室しかなく、そっちには宿泊者の方がいらっしゃるので向かう方向を変えました。階段を上らずに、右手方向の渡り廊下を渡って温泉へ入りに行きましょう。

渡り廊下の先を右方向に進んでいくと温泉がありますが、ここでさらに寄り道をしてみます。左の奥に階段があり、そこを下っていった先には一体何があるのか。

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答えはなんと卓球場でした。

温泉旅館と切っても切り離せないのが卓球で、そういえば古い旅館だしそういうスペースはないのかも思っていたら1階部分にあったとは。しかも卓球台が3つも置いてあるので思う存分楽しめます。

このフロアのすぐ上は客室ではなく大広間になっているので騒音の心配もなく、人が多い時期にはここで白熱した戦いが繰り広げられているのかもしれませんね。

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それでは、改めて温泉に入りに行くことにします。

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温泉へ続く廊下からの眺め。右から新館、本館、東館

温泉へ続く廊下がかなり長いのも個人的には好き。

ぱたぱたスリッパの音を立てながらしんみりと歩いている中で旅館の広さを実感できるし、曲がり角を曲がったりするたびにまるで探検でもしているかのような思いになる。

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基本的にはすべて木造の建物ですが、電気がないとやはり話にならないので至るところに配線が通っています。

改築や工事を繰り返しながら今日まで続いていた歴史ある旅館。普通ならスルーしてしまう何気ない一角もじっくり観察したりしてました。

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そしてメインの温泉はこちら。

大浴場と露天風呂はガラス一枚で隔てられていて、造りは結構新しめでした。

お湯については、田沢温泉の特徴であるぬる湯(源泉38℃~40℃)の源泉掛け流しで、これ以上ないほどリラックスできます。体温とあまり変わらない温度の中にじっくりと入っていると、心身ともに温まっていくのが分かりますね。

湯温が湯温なので1時間でも2時間でも浸かっていられる気がするし、なんなら文庫本でも持ち込んで読書しながら時間を過ごしたい気分。今回は30分ほど入ってました。

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で、実は大浴場+露天風呂以外にも温泉はあって、ロビーから階段を下ったところにある家族風呂がそれになります。

家族風呂は2箇所あり、どちらも大浴場などと同じようにぬる湯が楽しめます。

食事を楽しむ

温泉に入りまくってたらいつの間にか食事の時間になりました。

夕食及び朝食は、これまたロビーのすぐ横にある食堂でいただくスタイルとなりますが、追加料金(¥1,500)を払えば部屋食に切り替えることが可能です。今回は一人で満喫したかったこともあり、予約の時点で部屋食を申し込んでおきました。

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毎度のごとく日本酒を注文し、夕食と一緒に楽しみました

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はい。見ての通り完全に優勝しました。

夕食の献立は以下の通りです。

  • お蕎麦
  • どじょうの天ぷら
  • 栗や豆腐、こんにゃく等の地元の作物
  • かぼちゃの煮物
  • 鯉の刺し身、信州サーモン、馬刺し
  • 鮎の塩焼き
  • 炊き込みご飯
  • 鯉のあら煮
  • お吸い物
  • マンゴームース

鄙びた旅館で、その土地ならではの美味しいものを日本酒と一緒に満喫する。これ以上の幸せは正直ありません。

どれをとってみても美味しさに溢れていて、一口食べる度に顔がほころんでしまう。窓から見える景色は青木村田沢温泉の夕闇、そして新館の部屋の明かりのみ。周囲は寂として声する者なく、そんな中で島崎藤村が泊まった当時の雰囲気に思いをはせながら酒を飲む。

もう最高すぎませんかね?

確かに宿として見ると多少の不便さはあるかもしれない。最新のホテルなどと比べるとサービスの違いもあるし、エアコン等は当然のように無いので、寒くなったら浴衣の上に一枚羽織るだけ。

でもそれがいい。この時間の過ごし方がとても好き。やはり自分はこういう宿が一番のお気に入りのようです。

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夕食の後は再度温泉に入りに行ったり、静かに館内を散策したりしてから布団に潜り込みました。

翌日

むくり。

布団の隙間から入ってくる空気が妙に冷たい。日に日に朝方の気温は徐々に冷え込んできていて、この日も想像以上に寒かった。

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毎回思うけど、旅館で迎える朝の寂しさはなかなかのものだと思う。

あと数時間もしない内に宿を去らなければいけないわけで、いつまでものんびりしていたい気持ちばかりが高まってしまう。

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まずは朝風呂として大浴場へのろのろと向かう。

朝起きたばかりで眠気がマックスなのに、一度温泉に入ると途端にすっきりするから朝風呂はやめられない。ぬる湯だから身体への負担も小さいし、よくよく考えると自分は暑がりなのでぬるい温度の方が良かったりします。熱い湯も気持ちいいんだけど、あまり長くは入っていられないのが辛い。

起きた時間が結構早く、朝食の時間まではまだまだ余裕があったので、例のまったりスペースでまたしても読書したりして過ごしました。

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そして、待ちに待った朝食の時間。

山の幸を中心とした食事はこれまた非常に美味しく、昨日に引き続いておひつのご飯を空にする勢いでした。もうおかず一品に対してご飯一杯を消費する感じ。

いつもなら朝の食事なんてあまり喉を通らないのに、ここまでスムーズにぱくぱく食べられてしまうのは料理の美味しさあってのこと。やはり旅館の食事はいいですね。

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最後は割引として¥1,000に加え、GOTOの地域共通クーポンを¥2,000分いただきました。

ちなみにですが、計算してみたらこの今回の宿泊料、¥3,000を差っ引くとなんと朝夕ついて¥7,000というバグみたいな値段で泊まれたことになります。もうGOTOトラベルキャンペーン様様という感じで、色々賛否両論あるとは思いますが旅行好きにとってはこの制度を活用しない手はありません。

宿のご主人の方にも「また泊まりに来てね!」と言われちゃったし、ありとあらゆる点が自分の性癖に合っているので再訪したい気持ちでいっぱいでした。

おわりに

数年前にちらっと情報を得ていたますや旅館さんに泊まれただけでも嬉しいのに、そこで出会う風景がことごとく予想を上回る素敵さで感無量です。滞在中は終始一貫して感動しっぱなしだったし、リピーターが多い宿というのも納得といったところ。

次回は冬に訪問して、肌寒い中でぬる湯に思う存分浸かってみたいものです。

おしまい。