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ゆるふわアウトドアとか舞台訪問とか

【美保館】 山陰・美保関の老舗旅館を訪ねて (@島根県松江市)

港町の旅館に泊まってきた話。

【訪問日:2020年10月11日~12日】

島根を旅する

山陰旅行の後半戦が始まりました。

この日、温泉津温泉を後にした我々は再度電車に乗って島根県を東に向かいます。

今回はどこでもドアきっぷの効果を最大限に活かすため、移動はすべて電車を使いました。最も、この辺りの沿線の風景を楽しむという意味であれば、キャンペーンがなくとも必然的に電車を使っていたかもしれません。

旅と電車は本当に相性がいい。

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この日はまず出雲市周辺をぶらぶらした後、出雲名物の割子そばを頂いたり、GOTOの地域共通クーポンを活用して自己負担額110円で地元の日本酒×2を購入したりしてました。旅館に泊まって温泉を満喫できるだけでなく、お土産用のクーポンまでもらうことができる。GOTOトラベルを活用していく中で、そのお得さに感動してばかりです。

少し意外だったのは、想像以上に出雲が人で溢れていたこと。

すでにコロナの影響よりも外出する方を優先してる人が多いようですね。昨日の温泉津温泉があまりにも人が少なかったので、その落差に若干唖然としたのは内緒。

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そして、ここからが後半戦の本番。

まずは米子駅から境港線に乗り、終点の境港までワープします。境港から今日の宿までの距離は結構あるので、前もって予約しておいた宿の送迎車に飛び乗って宿を目指しました。

この時点で、「あ、相当にアクセスしにくい場所にある宿なんだな」と感づかれた方は察しが良い。

美保関という街

それもそのはずで、今日宿泊する旅館美保館は交通機関からは隔絶された場所にあるのです。

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美保館については追々説明するとして、まずはこの美保関という場所について触れておきたい。

美保関は、地図を見てもらえるとよく分かると思うけど日本海に突き出た半島の先っぽにあります。境港からだと橋を渡る必要があり、そこへ向かうバスも本数が非常に少ないので車がないとアクセスは困難な場所です。

その歴史は古く、足利時代にはたたら製鉄による鉄の輸出港として栄え、その後室町時代になると日鮮貿易、江戸時代では北前船の廻船(港から港へ旅客や貨物を運んで回る船)の拠点としても重要だったといいます。つまり交通や交易の面では非常に重要な「港」であり、西日本有数の歓楽の町として当時は賑わいを見せました。

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今ではその華やかな雰囲気は影を潜め、鄙びた空気が漂う漁港としてひっそりと存在しています。

港をぐるっと囲むように街が形成されていて、境港から車で海沿いを走ってくると突然高い建物が登場してくるのがかなり印象的でした。

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また、海から伸びる参道を歩いていった先にある美保神社は、二殿連棟の特殊な本殿(美保造り)を持ち、大社造りを二棟並べて装束の間でつないだ見事な建築です。規模もかなり大きく、さらに事代主命(恵比寿様)の総本宮ということで、奇しくも昨日観覧した石見神楽の舞が脳裏に浮かんでくるようでした。

個人的に自分が神社に求めるのは「静かなこと」なんですが、ここはまさに静寂が支配する空間といったところ。ふと椅子に腰掛けてのんびりと過ごしていると時間を忘れてしまうほど居心地がいい。

ただ歩いて散策しているだけで心が落ち着く場所。それが美保関の味わい深いポイントの一つだと感じました。

美保館本館を散策する

さて。

一通り歩き回ったところで、今日の宿である美保館に向かうことにします。

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左が美保館本館、右の背の高い建物が美保館新館

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美保館本館は明治38年(1905年)に建てられた築115年にもなる割烹旅館で、国登録有形文化財に指定されているほどに貴重な宿。

美保関が海上交通の要所であったことは先の述べたとおりですが、時代が経つにつれて海上輸送の需要も徐々に減少してきました。そこで、当時の廻船の屋号「北国屋」の主人であった定秀家が、美保関で初めて本格的な旅館として美保館を建築し、営業を開始されたそうです。

現在では宿泊そのものは新館へ移し、本館は朝食会場に使用されているほか、結婚式場やコンサートの会場としても活用されているとのこと。

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左手が美保館本館、右手が1棟貸切の宿「美保館別邸 碧石の杜 離れ」

まずは新館に荷物を置いて浴衣に着替え、兎にも角にも本館を散策してみましょう。

海が目の前に広がっている新館入り口を出て、木造のトンネルを通っていくと山側に1本入った通りに抜けることができます。

新館の入り口があるこの通りは青石畳通りと呼ばれていて、その名の通り石畳がずっと遠くまで続いているのが特徴。ここはかつて廻船問屋が多く集まっていた場所で、石畳は当地の海石を切り出して敷設したものだそうです。

その当時の面影を残す古い町並みと石畳の道が実に落ち着いた雰囲気を醸し出していて、特に雨が降ったときは石畳の濡れ具合が情緒深い。

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続いて、木の引き戸をガラガラと開けて本館の玄関へ。

何に驚くって、本館に入って最初に目に飛び込んでくる光景がこれですからね。現役で使用されている施設とはとても思えないくらいに歴史の深さを感じてしまう。明治の造りなので靴箱なんてものは当然のように無いし、上がってすぐに受付(でいいのか?)のスペースがあるのも素敵。

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そして、美保館を美保館たらしめている唯一無二の風景がこのエントランス部分。この風景をずっと見たかったのでもう感無量といっても過言ではない。

当初からこのこの構造だったのかは定かではありませんが、屋内でありながらまるで屋外のような開放感があります。大きく取ってある吹き抜け部分、エントランスに並ぶ洋風な椅子や机、それに二階部分の洒落た造り。これは正確に言うとアトリウムという構造で、天井から十分な陽光が得られるので閉塞感がまるでありません。

もうなにもかもが性癖に刺さってくるような建築方式で興奮してきた。自分達以外には宿泊客も観光客もいなくて、昨日に引き続いて「遠征先の世界観に取り込まれた」ような気分を味わうことができました。

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2階奥が朝食スペースですが、1階奥でも食事ができるようです

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まるで秘密基地のような2階の小スペース

特に2階部分は瓦屋根があったり庇(ひさし)が設けてあったりするので、一瞬屋外にいるような錯覚になるのですが、エントランス部分の床は普通の木の板だし、あれ?さっき玄関上がってきたよな?ここは外なのか?と混乱してしまう。

外から見れば一般的な古い木造建築かと思いきや、一歩中に足を踏み入れただけで異世界に飛んだかのように思えてくる。構造だけでここまでワクワクしてくるような旅館にはなかなか出会えるものではありません。いや、本当に来てよかった。

ここでちょっと訪問の時間帯の話をすると、朝食の時間帯だと他の宿泊者の方も同じように写真を撮りまくるので、それよりは前日の夕食前とかに訪れるほうが空いてておすすめです。実際に今回も自分たちしか訪問者は居なかったので。

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2階部分には新郎新婦の方の控室もあり、結婚式場としても使われていることが即座に理解できました。こんな素敵な旅館で式を挙げられたら、それはもう幸せになりそうですね。

夕食はカニまつり

本館をしっかり散策して、さらにその後に新館の温泉にも行ったりして精神的にはもちろんのこと、身体の方もリフレッシュできました。

そして待ちに待った夕食なのですが…これがまた凄かった。

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圧倒的カニ圧を感じる

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今回のテーマはカニ

それもそのはず、美保関の対岸に位置する境港は日本でも有数の水揚げ量を誇る港町で、マグロに松葉ガニ、紅ズワイガニなど海の幸の宝庫なんです。今回はカニコースを予約したので思う存分にカニを食べられるというわけですよ。

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当然ながらカニ以外の献立も素晴らしく、海の幸を中心にボリュームたっぷり。

毎度のことのように日本酒を注文し、お互いに一杯やりながらその美味しさに歓喜してました。昨日もそうだったけど、温泉に入って素敵な宿に泊まって、さらに食事も満喫できる。まさに旅の良さが詰まっているような1日の過ごし方ができている。そんな気がする。

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カニを食べるのなんて、正直に言うと○年ぶりだった。

1杯のカニを丸ごと、しかも全て自分の手で切り分けながら食べる経験も久方ぶり。食べている途中に完全に無言になってしまうことで有名なカニですが、その美味しさは折り紙付き。酒が進まないわけがありません。

カニ→カニ→日本酒→カニ→カニ→日本酒(ryのループが永遠に続いて、日本酒を無限に消費する勢いでした。

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夕食の後は再度本館を散策したり、青石畳通りをぶらぶらしたりしてました。

さらに、新館のロビーでは1年に1回しか咲かないという月下美人が咲いているのを見ることができたりと、もう何回目か分からないくらい運がいい体験をしたりもしました。今回の旅って何から何まで運が良すぎないか?

そして山陰の夜はゆっくりと更けていきました。

翌朝

むくり。

山陰旅行最終日の朝は悲しいくらいに静かだった。

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昨日チラ見しておいた本館2階で朝食をとる。

しかし、なんだかしんみりとしてしまう。ただでさえ旅館の朝食って、夕食とは正反対でものすごく静かなものなのに、2泊3日の充実しまくっていた一連の旅行の最終日ともなればなおさら悲しい気持ちになる。

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朝食をいただきながら、土曜から始まった温泉満喫旅のことを思い返してみる。

そういえば山陰に行きたいとずっと思っていて、気がつけば良さげなサービスがあったから突発的に行程を組んだんだっけか。終わってみれば充実感と充足感に包まれるような旅だった。

あまり事前知識がないような土地に行ってみて、その土地の雰囲気や食事、宿をありのまま楽しむ。自分がやりたい旅のスタイルそのものが実行に移せて嬉しいし、こんな旅を今度も続けていきたい。

そう思えるような素敵な行程でした。

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追記:昨晩鑑賞した美しい月下美人は、翌朝になると焼酎に付けられてました。こういうお酒もいずれは飲んでみたいものです

おしまい。