【訪問日:2020年12月19日~20日】
「雪国を訪ねる」ということ
今回の舞台は福島県です。
実はかねてから宿泊してみたい宿があり、投宿と合わせて冬の福島県を散策してみることにしました。とはいえ、2020年も終わりかけている最中の福島県はさながら厳冬期。生半可な装備では低体温症になることは避けられないため、服装には気を使いました。
そんな福島県への移動は、今回は夜行バスを使いました。
名古屋にある名鉄バスセンターからは全国各地に向けて多数の夜行バスが発着しているので、夜行バスの利用が問題ない場合はこれを使うのが大変便利です。いつもだったらロードバイクを同伴する旅になるのですが、高速バスにロードバイクを乗せるのは基本的にできません。なので、夜行バスどころか高速バスに乗る旅も久方ぶりというわけです。
夜行バスでの寝方を完全に忘れていたせいであまり眠れず、早朝7時30分に郡山駅に着いた時点では眠気がまったく取れていない状態。こんな状態で満足のいく散策ができるのかと不安になるものの、たいていは旅先の体験の面白さのほうが上回るので問題ないです。あ、夜行バス自体は乗客が6人くらいしか乗っていなかったので結構快適でした。
ともあれ、ここからが今回の旅のはじまり。
まずは、郡山駅から電車に乗って会津地方に向かいます。
郡山駅周辺は気温こそ低いものの、雪の気配はまるで感じられませんでした。それが少し西へ向かうだけで途端に雪国の景色に様変わりし、積雪だけでなく降雪も強くなってくる様子。リアルタイムで降雪している状況そのものを見るのも久しぶりで、否応にも自分が東北地方に来ていることを実感できました。
驚いたこととしては、線路に積もった雪を電車がかき分けながら進むので窓に雪が段々へばりついていき、最終的には何も見えなくなることですかね。単に雪が降っているだけならこうはならないわけで、さすが福島県といったところでしょうか。
喜多方ラーメンを食す
途中に駅に着く度に、開いたドアから入ってくる寒気に震えることn回。あっという間に会津若松駅に到着しました。
ここで今回の宿に同行する友人と合流するのですが、その時間まではまだかなりあります。そこで、少し足を伸ばして喜多方に移動し、早めの昼食をとることに。
本当はしばらくここで時間を潰す予定だったものの、ふと地図を見てみるとラーメンで有名な地名が目に入ったものだから考える前に行動に移していた。じっとしているのがあまり好きではないので、良さげな場所を見つけたらすぐに行動するようにしています。この考えはどうやら自分に合っているようで、あれこれ悩んで電車の時間を逃してしまう…ということもありません。
やらないで後悔するよりは、やって後悔したほうがいい。待ち合わせの時間には十分間に合うので、少し遠出してみます。
というわけで喜多方に到着。
この日は雪90%曇り10%みたいな天気予報で、晴天についてはあまり期待はしていませんでした。ところが蓋を開けてみれば快晴そのもので、雪国=天気が悪い、という連想をしていた私にとっては正直意外です。
雪が降らない時間帯は、案外晴れているのが多いのかもしれませんね。どうなんでしょうか?
で、喜多方ラーメンタイムなわけですが。
喜多方は言うまでもなく、日本三大ラーメンの一つ(他の2つは札幌ラーメンと博多ラーメン)に数えられる喜多方ラーメン発祥の街として、全国的に名が知られています。店の数もそれこそ星の数(120軒くらい)ほど存在しているため、初訪問の私がその中から一箇所選ぶのはある意味で至難の業。こういうときは悩んでしまってなかなか決まらなかったりもするのですが、やはり初訪問ということで王道の店に行くことにします。
訪れたのは坂内(ばんない)食堂というお店で、喜多方ラーメンの老舗御三家にも数えられるほど歴史のある有名店です。創業は1958年(昭和33年)で、全国各地にある坂内食堂の本店がこちらになります(正確に言うと、総本山であるこちらのお店の許可を得た別会社が運営するものなので全くの別物)。
今回は、肉そば(¥1,000)を注文。
味は思ったよりはあっさりとしており、ラーメン自体あまり口にしない自分でも分かるほどの美味しさで感動するしかない。濃ゆい味付けのものが嫌いなので、こういう食べやすいものが名物だと色々助かります。
チャーシューも想像の2倍くらい入ってて、麺も美味しければ具材も美味しい。最後に温かいスープを飲み干していると、さっきまでの外の寒さがまるで嘘みたいに思えてくる。冬にはやはり汁物が一番だな。
電車の時間に余裕を持って移動できたこともあり、食事の貴重なひとときをのんびりできたのは幸せでした。
で、坂内食堂から喜多方駅へ戻る際には、雪国でしか見ることができない景色をたくさん見ることができました。
そもそもここまで道路に雪が積もっているという状況が人生で数えるくらいしかないし、町のいたる所で除雪車が稼働しているのにはもう驚くしかないです。雪の上を歩くなんて一体何年ぶりなんだろうか。
会津若松を歩く
雪と格闘しながら喜多方の町をしばらく散策し、再度電車に飛び乗って会津若松駅に帰還。
ここで友人と合流し、宿のチェックイン時間までは会津若松をしばらく歩いて回ることにしました。
さっきまでの天気を見るに、今日はなんだかんだで晴れているので行動しやすそうね。
…という淡い期待は当然のように打ち砕かれ、会津若松に戻ってきた時点で天候が急変する事態になりました。晴れ間はもとより曇りですらなく、まるで吹雪のように雪と風がセットになって襲ってくる始末。
せめて雪が降っているだけなら良かったものの、ここまで吹雪いてくると流石に散策どころではない。
雪の影響で、視界に入ってくる景色に色彩がまるで無い。
鮮やかさは失われ、ほぼ全てが白色で、残りの数%くらいがその他の色みたいな感じになってますが、他の季節、他の地域で目にする景色とは明らかに異なっているのがいいですね。自分がいま置かれている状況が「冬」だということを如実に感じさせてくれる。
あ、良い忘れましたが、会津若松の散策にはまちなか周遊バスが非常に便利でした。今回は何をトチ狂ったのか徒歩がメインでしたけど、周遊バスが会津若松の要所をつなぐように走っていて、しかも一回の運賃は定額(¥210)です。雪がひどいときには普段よりも歩くのが大変になるし、基本的に周遊バスに乗れば自分の行きたいところには行けると思うので活用したほうがいいです(時計回り/反時計回りで路線としては2種類あります)。
向瀧に泊まる
結局のところ、会津若松駅を出発してからはさざえ堂、白虎隊自刃の地、鶴ヶ城周辺を順繰りに散策し、そろそろ寒くなってきたところで周遊バスに乗って、今日の宿である東山温泉街に向かいました。
この日泊まった向瀧の宿泊記録は別記事でまとめています。
翌朝は晴れ
向瀧宿泊から一夜明け、今日はもう中部地方まで一直線に帰るだけとなります。
個人的に、今回の旅は1泊2日にしては移動距離が比較的長めだったような気がしなくもない。考えようによってはもっと休みをくっつけて、できるだけ長い期間旅先で過ごすほうがお得感が出るという意見もあります。遠い場所に行くには移動が大変ですし、時間もかかるしね。
しかし、逆に考えると1泊2日でこれだけ"濃い"時間が過ごせたということ。いわば短い旅先での中に楽しい時間だけを凝縮して、その思い出をより強固にできたとすれば、これ以上に嬉しいことはありません。
ささっと楽しんで、ささっと帰る。
こういう旅も面白い。
会津若松の朝は何もかも静止してしまったくらいに静かで、その一方で町が始まっている音が確かに聞こえてくる。それは始発の路線バスの音だったり、宿泊客が運転する車の音だったり。静まり返った温泉街に徐々に色んな音が響いてくるのは心地よいものがあります。
見知らぬ土地で迎える朝は、やはり新鮮そのもの。
一口に冬の朝といっても地域によって全く異なる顔を覗かせる上に、自分が知っている「冬」とは明らかに違う気候なものだから、出会う風景すべてが楽しく感じてくる。
初めて訪れる場所、その土地の空気。これを味わうために自分は旅に出かけているようなものだ。
で、この日の天気はご覧のように快晴でした。
昨日の雪の影響を色濃く残しつつも、地面と空とで180°違う様相になっているのが面白い。今日もいい一日になりそうだ。
最後は、駅の構内で購入した駅弁を新幹線内でいただきながら帰路に着きました。
おわりに
雪国の温泉旅館に泊まれば、より一層温泉を気持ちよく感じられるのではないか、という理由で決行した今回の旅でしたが、予想以上の寒さによってその思惑は果たされたことになります。さらに旅館そのものの居心地の良さもあり、忘れられない2日間になったことは言うまでもありません。
あとは…振り返ってみれば、今回の旅は「移動」がすごく印象的だった気がしますね。
夜行バスによる郡山までの移動に始まり、寝て起きたらそこは雪国。電車による移動時には、会津若松に向かうにつれて増していく雪深さを直に感じることができた。最終的には、駅弁を頬張りながら新幹線の車窓からの眺めを見つつ帰るといったこともできました。
旅の移動時に何をするかは個人個人でそこそこ差がある気がしてるんですけど、ここまで何も考えずに、しかもストレスなく移動できたのは予想外の一言でした。今後も1泊2日とかの短い期間の旅は積極的にやっていくつもりですが、移動の楽しみを忘れずにいたいものです。
おわり。